科学的に自分の強みを見つける方法がある!

自分の強みを見つけるには、身近にいる人に聞いてみましょう。自分が仕事で順調なときやいい結果をだしているときは、どんな強みを活かしているかを聞いてみるのです。人は自分のことは意外と知らないものです。他の人のほうが自分の長所をよく捉えている可能性があります。

また、強みを知る診断ツールというものがあります。webで気軽に試せるものもありますし、書籍もたくさんあります。webで簡単に試せるものをいくつかあげてみます。

VIA-IS
心理学者によって開発された診断ツール。120の質問を『とてもよくあてはまる』~『まったくあてはまらない』の5段階で『24強みとしての美徳』評価する。無料で試せる。

ストレングス・ファインダー
34を診断する。有料。テストの内容によって、値段が変わる。主にビジネスマン向け。

エニアグラム
9つのタイプのうち、自分がどこに属するのかを見る。web診断は無料。有料の会員コースもある。

他にも探せば、いろいろな自己診断ツールがあります。これらを組み合わせて自分の強みを探してみてはどうでしょうか?

自分の強みを見つければ、家族や身近な人のためにその強みを使うことができます。これがやりがいにつながります。自分の仕事に意義を見出すと、多少の困難や苦境に立たされても、最後までやり抜こうという意欲が湧いてくるのです。

しかし、実際にはそうした意識で仕事をしている人は少ないようです。1915年に電通総研が実施した調査によると、働く目的を『生きがいを得るため』と回答下人は1割いるかどうかという結果でした。もっとも多かった回答は、『安定した収入のため』の69%で、仕事を選ぶ基準も『できるだけ安定した会社で働きたい』37%が一番多いという結果でした。

仕事観は3つのタイプに分けられるといわれています。

・ジョブ…仕事を『お金を得るための労働』と捉えている。仕事に対しての満足度は低め。
・キャリア…仕事を収入だけでなく、昇進・昇給・名誉・権力を獲得するする手段と考えている。ワークホリックなタイプ。
・コーリング…英語で『天から与えられた役目』という意味をもつ。自分の仕事や人生に前向きでやりがいを感じている。

仕事に何を求めるか、どんな意義を見出すかは人それぞれなので短絡的にいい、悪いということはできません。しかし、コーリングといわれる仕事観を持つ人は前者2タイプとは決定的に違うところがあります。ジョブとキャリアは収入や地位や名誉など、外から与えられるもののために働いています。しかし、コーリングタイプは自分の内側から感じる意義が仕事のモチベーションになっています。

仕事の結果だけでなく、そこにたどりつくまでのプロセスも意義を感じるのも大きな特徴です。職種でいうと、弁護士や医者、プロのアスリート、アーティストなどが多いようですが、専業主婦も意外と多いそうです。

しかし、こうした職種の人すべてがコーリングではなく、コーリングであっても環境の変化などでキャリアになったり、ジョブだった人がコーリングになったりもします。あなたはどうなりたいですか?

自分の強みを知ればレジリエンスは身に付きやすい

『あなたの強みを3つあげてください』と聞かれて、あなたはすぐに答えることができますか?強みは誰にでも備わっているはずのものですが、世界的に有名な教育学者のケン・ロビンソンによると、『ほとんどの人は自分にどんな才能があるのかさえ知らない』のだそうです。彼はTEDで学校教育が子どもたちの創造性を奪っているという演説をして話題を呼びました。

レジリエンスの高い人は、自分の強みが何であるかを把握しています。自分の強みを理解している人には以下のような特徴があります。

・仕事の能力や仕事への充実感、目標が高い
・強みをうまく使えるので自尊心が上向く
・強みをいかすことで活力が生まれ、ストレスを感じにくく、感じても回復力(レジリエンス)が高い

仕事が楽しくない、ただ生活のためだけに仕事をしているという人は本来の自分の強みを活かしていないのです。仕事で自分の強みに日常的に集中する機会のある人は、仕事の意欲がそうでない人より6倍も高いという研究報告もあるのです。

日本人は謙遜を美徳とする風習があります。そのせいか、自分の短所については把握していても、自分の強みが何であるかがわかってない人が多いようです。また、日本の教育は成績を1~5段階の評価でつけます。すべての生徒がすべての面において5をとる努力をするような教育方針をとっています。

成績がオール5というのは確かに優秀ではありますが、減点主義、欠点克服主義という側面があることも否定できません。自分の不得意なことばかりにしがみついていていたら、自分の生まれ持った長所を伸ばす機会を失ってしまいます。

強みはその人が生まれながらに持っていることがほとんどです。自分には特に努力もせずにできることが、他の人にはこの上もない苦痛を感じる作業だったりするのです。逆に、生まれつきどうしても苦手なことは、どんなに努力しても結局苦手なままでおわることが多いのです。努力したところで、どうにか平均点にたどり着けるくらいにしかなりません。

それならば、そこはいい意味ですっぱりとあきらめて、自分の長所や得意なことに磨きをかけるほうが得策といえます。仕事でも、何でも自分で抱え込んで毎日残業している人がいますが、これもおそらく自分の強み、弱みを理解していないことが考えられます。

苦手なことは、それが得意なことに早めにまかせて、その代わりその人が苦手で自分は得意なことをひきうけるほうが効率的に仕事をすすめることができるのではないでしょうか?

苦手なことにいつまでもかかわっていたら、『自分は才能がない』『自分は恵まれていない』などの被害者意識をもってしまうことすらあるのです。

自分の強みを見つけるにはどうしたらいいのでしょうか?それは、自分を活気づけてくれるもの、ワクワクを感じるものがヒントになります。何をしているときの自分が一番じぶんらしくいられるか、集中していられるかを探してみましょう。

反省のしすぎに注意!過剰な反省は逆効果!

反省するという姿勢は仕事においては大事なものですが、ほどほどにしておかないとネガティブな感情を次々と呼びこむ原因になることがあります。

サッカーや野球をやっていた人ならわかるとおもいますが、試合の後は必ずといっていいほど反省会をやっていたのではないでしょうか?勝っても負けても反省会をするチームも多いようです。

もっと向上できるところはないか、改善できることはないかと探すのは悪いことではありません。ただ、反省にはひとつ落とし穴があるので注意が必要です。反省はネガティブな感情を増幅することがわかっています。

反省は失敗をしたシチュエーションを繰り返し思い出すことになります。『あそこはああすればよかった、ここはこうすればよかった』と何度も思い出しているうちに、そこで思考がとまってしまうことがあります。

失敗したあとに大事なのは、『次はどうすればいいか』という、今後の行動にいかに役立てるかを検証することですが、失敗したことそのものにいつまでもこだわっていたら、クヨクヨ悩んでいるのとかわりません。

少し昔のマンガには、小学生の児童に自分のやったことを反省させるために廊下に立たせる場面がでてきます。しかしこういった罰には、『次はどうするか』といった、失敗を今後に活かすという視点がありませんし、屈辱や苦痛が伴います。建設的なことではありません。建設的な反省とは、どういったものでしょうか?

心理学を研究するある大学の教授は、学生が何か失敗をしたときに、反省ではなく、『振り返り』という言葉をつかうのだそうです。反省はどうしてもネガティブなイメージがつきまとうからということのようです。

学生が実習や課題をこなすうえで、うまくいかないことや失敗することは多々あります。そのときは、まず、どこが良かったかを思い出させます。その上で、もう一度やるとしたら、今度はどこに気をつけたらいいかを考えるよう、うながすのです。

これなら、改善の必要なところを見つけ出し、次につながる対策を自然に考えることができます。結局はこれも『どこが悪かったのか?』と聞くのと同じではあるのですが、落ち込まずにもっとポジティブに考えることができるわけです。

日本の企業には営業成績が悪い社員を大勢の社員の目の前でつるし上げにするような会社がまだあるようです。しかし、今月の営業成績が悪かったとしても、その原因が何であるかを考えずに本人ばかりを攻めたてても改善は難しいように思えます。

上司や同僚の適切なサポートがあれば、成績が向上する糸口くらいはつかめるのではないでしょうか?反省で大事なのは、反省そのものよりは『次はどうするか?』『ここから学べることは難だろう?』と失敗を教訓として前向きに捕らえることです。

レジリエンスを鍛えれば失敗からくるネガティブな感情を早めに止めて、次の行動への教訓として生かすというポジティブな考え方ができるようになります。レジレエンスを学ぶのであれば、一人で学ぶよりも職場の全員が学ぶほうが効果が高くなりそうですね。

すべては思い込み!?役にたたない感情を認識しよう

予想外のトラブルに見舞われても、『まあ、どうにかなるさ』とのんびり構えていられる人もいれば、パニックになってヒステリーをおこしてしまう人もいます。その状況にどんな反応をするのかは、人によって様々です。この差はどこから来るのでしょうか?

人は予想外のできごとがおきると、自身の過去の体験を通して理解ようとするくせがあります。過去の経験が自分自身にできごとの説明をするのです。どんな説明になるかは、人によってまったくちがう物となります。これはレジリエンスでは『思い込み』と表現します。

思い込みは、人によって違うので同じできごとに大してもその人独自の色眼鏡で見ることになります。この色めがねにより同じできごとでも、人によってネガティブに捉えたり、ポジティブに捉えたりする違いがでてくるのです。

この反応のプロセスを認知行動療法を開発した臨床心理学者、アルバート・エリスは『ABCモデル』と名づけました。

・A(adverstity=逆境)予想外のできごとやトラブルが起きたときの状況
・B(belief=信念)その出来事の自分への説明
・C(consequence=結果)それに反応した感情や行動

何かトラブルがおきると、AがBを引き起こし、Cに繋がります。

例えば、普段から折り合いの悪い上司がいます。上司に対するあなたの反応は次のようになったとします。

A=日ごろから上司が冷たい。自分を無視している
B=私には価値がないのかもしれない
C=憂鬱で仕事が手に付かない

しかし、その上司は私生活でトラブルを抱えており、人のことにかまっている余裕がないだけだということがわかりました。上司の態度の原因が自分ではないということが理解できたので、憂うつ感や劣等感は解消されます。

ネガティブな感情は自分の思い込みによって引き起こされることが多いのです。思い込みとネガティブな感情の関係について知っておくと、感情を整理しやすくなります。

怒り=自分の権利が侵害されるという思い込みから生まれる感情

不安・心配・怖れ=将来の脅威という思い込み

悲しみ=損失という思い込み

失望=期待したことが実現しないという思い込み

恥ずかしさ=人から賛同をもらえないという思い込み

罪悪感=人の権利を侵害してしまったという思い込み

すぐ感情的になってしまう人は、トラブルがおきると感情が先走ってしまうことがげんいんです。こういった感情が発生するメカニズムを理解しておけば感情に振り回されずに行動することが出来るようになるのです。

思い込みは、人が生まれたときから持っているわけではありません。過去の経験からいつのまにか刷り込まれたものです。こういった根拠のない思い込みは、過去のつらい経験に由来していることがほとんどです。

思い込みはやっかいな物ではありますが、自分の中にはこういった思い込みがあればネガティブな気分になりそうなときでも、冷静に対処できるようになります。何か困ったことがおきたら、自分の中のどんな思い込みがはたらいているのかチェックしてみましょう。

ネガティブな感情もレジリエンスには必要

レジリエンスには、つらい状況にあっても『続けていればそのうちできるようになる』『これくらい大したことはない』と思うことができる、楽観的な視点やポジティブな考え方が必要になってきます。

しかし、楽観的な考え方は思わぬ落とし穴におちることもあります。楽観的になりすぎて、自分に都合のいいことばかりに目をむけ、努力したり対策を講じることをおこたると、いずれ困ったことになるのは目にみえています。

例えば、働かずに宝くじを月に何万円も買い続けていたら、いずれ生活は破綻してしまいます。現実に目を向けない楽観性は役にたたないどころか、とんだ悪影響を及ぼすこともあるのです。

何か失敗すればネガティブな感情が湧いてきます。これは自然なことであり、自分で押さえつけることはできません。でも、ネガティブなことばかり考えていては苦しくなるばかりです。しかし、ネガティブな感情も上手く利用すればレジリエンスの向上に役立てることができます。

例えば会社で、大きなプロジェクトを任されたとします。『失敗したらどうしよう!』と不安でいっぱいになります。そこで、あらゆる形の失敗を想定して何かおきたらすぐ対処できるよう、対策を何種類もも講じておくことで、仕事を円滑に進めることができます。

また、最悪の事態にそなえて、何度も何度もシュミレーションを繰り返して、自分で納得のいくレベルまでもってくることができてから取り組めば、あせることもありません。ネガティブであったり臆病であるからこそぬかりなく準備することができる才能をもつ人も少なくないのです。

楽観的でも悲観的でも、困難な状況を乗り越えることは可能なのです。ただ、どちらも実際に何らかの行動を起こさなければ何の意味もありません。いまおかれている状況で最善の行動をとることが重要なのです。

とはいえ、やはりネガティブな感情が長く続くのはつらいものです。どこかで断ち切って、頭を切り替える必要があります。人にはそれぞれ考え方に癖があります。何でもネガティブに考えてしまう人は、ネガティブ思考が習慣化しまっているのです。

何か失敗したときには、自分の考え方にはそういった癖があるということを思いだすことで、ネガティブな感情をとめやすくすることができます。失敗をしたときには、ネガティブな考えをポジティブな考えに変える習慣が必要になります。

①永続的か一時的か…『これから先もうまくいくはずがない』という考え方を『今回、たまたまこうなっただけ。次はうまくいく』という考え方に置き換える。

②普遍的か、特定的か…『いまうまくいかないなら、どんな場合もうまくいかないだろう』を『いまうまくいかないのは、この条件に限ったことで、ちがう状況だったら、きっとうまくいく』

③外在的か内在的か…『失敗したのは自分の責任だ』から、『失敗したのは自分のせきにんじゃない○○のせいだ。○○を変えれば次はうまくいく』

少々言い訳めいているので、最初は少し抵抗があるかもしれませんが続けていくうちに切り替えが早くなっていきます。これも『メタ認知能力』が必要な作業です。自分の感情に常に注意を払うことを心がけましょう。

自分の感情を客観的に観察する

先述のけん玉の例でも取り上げましたが、目の前の小さなことに、いちいち反応する人はすぐにエネルギー不足になって集中力がなくなってしまいます。レジリエンスの高い人は常に冷静沈着でいられる、感情のコントロールが上手な人であるといえます。

そういえば、野球やサッカーなどで世界をまたにかけて活躍するアスリートは試合中、ピンチに絶たされてもポーカーフェイスで粛々と対応するタイプが多いようです。イチローなどはその典型的な例ではないでしょうか。一流アスリートと一般の人では、何がちがうのでしょうか?

これはメタ認知能力がカギを握っています。『メタ認知』とは、自分の行動や感情を客観的に見ることができる能力のことをいいます。このメタ認知能力が低い人は、抽象思考が苦手な傾向があるといわれています。

言いかえると目の前の出来事にとらわれすぎて、物事の全体を見て考えるということができないのです。例えば、自己中心的で周りの人を困らせてばかりいる人などはこの傾向が高い人といえそうです。自分が周囲の人からどうみられているかということに考えが及ばないのです。

逆にメタ認知能力が高い人は自分がいまどう感じているか、どんな行動をとればいいかを冷静に判断することができます。何かトラブルが起こったとしても、パニックにならずに対処方を考えることができるのです。

この能力は仕事や人間関係に大きな影響をもたらします。たとえば、仕事で大きなプロジェクトの責任者に任命されたら、その仕事をどこまで自分でやれるか、何を部下にまかせたらいいかなどを冷静に判断する必要があります。

恋愛でいえば、相手を観察して悩みがありそうだとか、不機嫌だといった感情を読み取って、話を聞いたり、あまりわがままを言わないなどの対応をとって、関係にヒビが入らないようにすることができます。

自分はメタ認知能力が低いかも…。と思った人、がっかりする必要はありません!メタ認知能力はちょっとした工夫で鍛えることができるのです。

日記をつけることは、メタ認知能力を高める効果が期待できます。フェイスブックやツイッターなど、人目につくSNSは反応がかえってくるので、より効果的です。文章は苦手…。というひとは、まずは箇条書きからはじめても大丈夫です。少しづつつづけていれば、その日の出来事で何が自分にとって重要だったかわかるようになってきます。

物事を『要約する』のもメタ認知能力の向上に役立ちます。例えば、会議の要点をまとめてみる、本や映画の内容を要約してみる、人に話してみるといったことを習慣づけるといいでしょう。要約とは、全体を俯瞰してみて重要な点を抜き出したり、共通点を見出したりする能力で、メタ認知能力をフル稼働させないとできないのです。

他には、図を描いて視覚化することもメタ認知能力が必要とされる作業です。仕事の問題点をチャートにしてみる、一枚の紙にまとめてみる、ということを心がけると次第にメタ認知能力が上がってきます。

自分のおかれた状況や感情を客観視する癖をつけましょう。

失敗したときこそ細かい分析をしよう!

人間は失敗すると、ネガティブな思考に陥りやすくなります。特に日本人は失敗をやってはいけないものと思い込んでいる人が多くいるようです。失敗して、そこから立ち直れないと負のスパイラルに嵌り込んで抜け出すのが難しくなることがあります。

負のスパイラルは、だいたい以下の5つの順番になります。

①パニックになり、思考停止状態になる。
②事跡の念にかられ、ネガティブ思考が発生する。
③ネガティブ思考がさらに過剰にネガティブ思考を生む。
④不快な経験に繋がりそうな行動をとらなくなる
⑤不快な状況を変えられないと認識して無力感にとらわれる。

このスパイラルから抜け出すカギは、失敗体験そのものを冷静に分析することにあります。失敗には大きくわけて、3種類あるといわれています。

①予防できる失敗
②避けられない失敗
③知的な失敗

①の失敗は、勉強不足や不注意が原因となるもの、ルールに従わなかったために起こったもの、能力不足などが挙げられます。工場で製造した製品に異物が混じったために自主回収をする会社などは、この失敗の典型的な例といえます。ルールを明確化すること、環境の整備などで改善できます。

②は自分でコントロールできない状況で起こる失敗です。例えば上司の指示が間違っていた、予想外の事故がおこったりした場合などです。これは過剰に責任を感じる必要はありません。自分ではどうしようもないことにとらわれる必要はありません。レジリエンスにはこのような合理性も必要なのです。

③は新しいこと、未知の分野に挑戦するときには絶対に避けられない種類の失敗です。この失敗は様々な学びのチャンスを含んでいます。ベンチャー企業は日々大小さまざまな『知的な失敗』を繰り返しているはずです。

グーグルやアップルなど、新しいサービスや商品を長年提供し続けている企業は、たとえ失敗してもそれを責めるようなことはせず、むしろさらに挑戦しつづけることを奨励しています。

しかし、日本人はこの『知的な失敗』と上手く付き合えない人が多いようです。失敗に学びのチャンスがあることに気付かず、罪悪感ばかりを抱え込んでしまうのです。

レジリエンスの大事な要素の一つに、失敗から学ぶという姿勢があります。失敗して落ち込むのは自然な反応なので仕方ありませんが、必ず以下のような冷静な分析をおこなう必要があります。

①三種類のどの失敗にあたるのか分析する
②過剰に自己責任を感じないようにする
③失敗の種類に応じて適切な対応をとり、積極的に学ぶ

失敗のない仕事は存在しません。失敗を恐れたり、自責の念を感じるのは自然なことです。しかし、そうしたネガティブな感情を何度も繰り返していくと、悪循環から抜け出せなくなってしまいます。

失敗を経験したら、早いうちからその失敗の本質を細かく分析し対応を考えることです。そうすることで負の感情のスパイラルから早く抜け出すことができます。失敗は学びのチャンスであることを忘れないようにしましょう。

メンタルは強さではなくしなやかさが大事!

メンタルを鍛えることは、かなり以前からビジネスマン必須のスキルでした。『鋼のメンタル』といわれるように、少し前まではどんな逆境にあっても強いメンタルで跳ね返すという考え方が主流でした。どちらかといえばタフでマッチョなイメージがあります。

しかし、どんなに強い金属でも強い圧力をかけ続ければ折れてしまうように、人の心も強さだけで乗り越えようとするとある日突然ボキッと折れてしまうかもしれません。日本の働き盛りのビジネスマンにうつや燃え尽き症候群が多いのも、ここに原因があるかもしれません。

メンタルを鍛える概念の一つに『メンタルタフネス』があります。関連した本も何冊も出版され、注目をあびました。これは開発者のジム・レイヤー博士によると、『自分の能力をより高めようと、一貫して努力する』という考えかたです。

メンタルタフネスに必要なのは文字通り『タフ』な態度であり、タフでいるには高い集中力と自己信頼が必要になってきます。プロのアスリートなどはこういった考えに基づいて日々のトレーニングをつづけていることも多いのではないでしょうか。

しかし、集中力は消耗品です。疲れてきたら集中力を維持することは難しくなります。また、逆境にずっとさらされていたら自己信頼をもち続けるのも難しくなってきます。

レジリエンスはこれとは考え方が少しちがいます。レジリエンスの特徴としてよく挙げられるのが『しなやかさ』です。メンタルタフネスが何事にも動じない強靭な精神であるとすれば、レジリエンスはものの捕らえ方の角度を変えたり、自分の感情に注意を向けるなど、冷静で柔軟な態度が求められます。レジリエンスに必要なのは以下のような要素です。

・冷静さ
・柔軟性
・楽観性
・自信力
・人間力
・回復力

です。メンタルタフネスに共通する部分もありますが、柔軟性や楽観性などタフなイメージとは少し遠いところがあります。

逆境を経験すれば確かにある程度メンタルは強くなりますが、何の対策も講じないまま逆境の中にい続けたら、ストレスで心を病んでしまう可能性があります。レジリエンスはそうした中でも冷静に自分の置かれている状況を把握し、環境や周りの人に対する自分の感情を整理したり、違う角度から見ることで失敗や逆境からくるストレスや落ち込みから回復することを目的にしています。

また、人間力というのは思いやりをもつこと、相手の立場にたって考えるということがふくまれています。一見、ビジネスの現場には無縁とも思えますが、世界規模で成功を収めている企業の多くはこうした企業理念が根付いているといわれています。

レジリエンスは企業だけでなく、教育現場でも注目をあびています。学校ではいじめが問題になっています。もちろん、いじめはやるほうが悪いのですが、子どもがどうしてもいじめをしてしまう原因はどこにあるのでしょうか?

はっきりした回答は出すことができませんが、自分の中にある劣等感や不満や怒りをどう処理してよいかわからないことも原因の一つとしてあるのではないでしょうか?それでついつい自分より弱い立場にあるも者にあったってしまうということがあるのかもしれません。

社会人だけでなく、子どもにも心の『しなやかさ』は必要ということではないでしょうか。

自分の置かれた環境に左右される人としない人の違いとは

レジリエンスの高い人と低い人の違いはどこにあるのでしょうか?

2014年のNHKの番組でレジリエンスが紹介されました。この中で、興味深い実験がおこなわれました。けん玉をつかって、レジリエンスの高い人、低い人を見極めるというものです。けん玉は慣れていない人が長時間つづけるのは、かなり根気のいる作業です。

実際、始めてから20分足らずで『もうダメだ~!』とあきらめてしまう人が続出しました。しかしその一方で、1時間以上粘り強く挑戦しつづける人もいました。あきらめてしまう人にはいくつかの共通点がありました。

すぐあきらめてしまう人は、けん玉が成功したときは『やった~!』と大喜びし、失敗すると『あ~!』とがっかりしています。どちらの場合にもいちいち反応が大きいのです。これは一見表情豊かでいいことのように見えますが、小さなことで一喜一憂するというのは、じつは消耗するのが早いということでもあるのです。

消耗が早ければ、あきらめるのも早くなるのは当然です。また、その人たちから聞き取り調査をしてみると、『自分にむいてない』『自分には無理』など、後ろ向きな発言をしていたのです。

一方、粘り強く挑戦し続けた人は、少しづつ上手くなっている、そのうち出来るようになるだろうという考え方をしていたのです。いちいち一喜一憂している人は目の前の結果ばかり見ていて、自分がいま何をしているのかわからなくなり、エネルギーを消耗してしまいます。

また、すぐにあきらめてしまうと、やはり自分はダメなんだという決めつけをしやすくなってしまいます。逆に1時間以上続けられた人は、いつか出来るようになるだろうという楽観性があり、少しづつ成長しているという自己効力感もあります。レジリエンスには大切な要素です。

あきらめのよさ、わるさは生まれつき個人差があるものと思っている人もいるかもしれませんが、習慣を変えれば誰でも身に着けることができます。その習慣は、主に以下の3つがです。

①ネガティブ思考の連鎖をその日のうちに断ち切る。
②ストレスを感じる体験をするたびにレジリエンスを鍛える習慣
③ときどき立ち止まり、自分をふりかえってみる

多少過酷な環境にあっても、この3つの習慣ができている人は仕事で常に結果を出し続けることができるのです。

レジリエンスは筋肉のように誰でも鍛えることができることがわかっています。海外では30年にわたって研究がすすめられ、『レジリエンス・トレーニング』として確立しています。

日本でもレジリエンスを教える団体があり、少しづつ認知されつつあります。このトレーニングを受けると、ほとんどの人がストレスに対処する自分なりの方法を身につけたり、自分を客観的に見ることができるようになった、逆境の中にあっても平気になったなど、おどろくような変化があるようです。

トレーニングを受けるのもいいのですが、自分で生活習慣や考え方を見直すことでレジリエンスを身に着けることも可能です。少しずつでいいので、生活習慣を変える努力をしてみましょう。

なぜレジリエンスが注目されるのか

レジリエンスとは、『精神的回復力』や『復元力』などと訳される心理学用語です。最近では、訳さずにそのまま使われることが多くなってきました。一般には、まだなじみの薄い言葉ですが海外のビジネスパーソンには必須のメンタルトレーニングの一つとなっています。

レジリエンスの研究のきっかけは1970年代にさかのぼります。1970年代にホロコースト(大量虐殺)を経験した孤児たちの追跡調査をしたところ、トラウマから立ち直れずに無気力や無力感にさいなまれている人たちがいる一方で、トラウマを克服し、社会人となり幸せな家庭を築いている人もいました。

この違いはどこからくるのかを追求する研究が始まりました。トラウマを乗り越えた人は逆境にあっても、その中にプラスの面を見出しポジティブに考えることができる『思考の柔軟性』をもっていることが明らかになったのです。

2013年、世界経済フォーラムが年一回開催する『ダボス会議』で、経済的競争力とレジリエンスの関係について衝撃的な報告がありました。アメリカやヨーロッパの国際競争力の高い先進国では、競争力の高さとレジリエンスの高さが比例していました。ところが、日本だけ競争力に比べてレジリエンスが著しく低いという結果が出たのです。

いまや世界経済はグローバル化し、中国やインドなどの新興国の台頭もめざましく、経済的競争は激化の一方です。これだけ世界がめまぐるしく変化していくと、今までのような現状維持をよしとする日本従来の考え方ではついていけなくなってしまいます。

常に新しいことがおきてあたりまえ!と心得ておかないといけないわけですが、日本人はどうもこのへんの心構えができていないようです。

残念なことですが、日本は自殺率が大変高い国です。最近はうつ病をわずらう人も急激に増えてきています。理由は人それぞれでしょうが、このようなメンタルが確立されていないことも要因のひとつではないでしょうか。

レジリエンスには、大きくわけて3つの特徴があります。

①回復力…逆境や困難に見舞われても、すぐ元にもどることができる。
②緩衝力…予想外の出来事や強いストレスに耐性がある。
③適応力…予期せぬ変化や危機にあっても、それを受け入れて対応する。

この3つの要素が備わっている人は、少々のことがあっても心が折れたりすることがありません。以前はメンタルトレーニングといえば、鋼のような強い精神力をつけることに重点がおかれていました。しかし、それだと強いストレスを受け続けるとある日突然、心が折れて立ち直れなくなる可能性があります。これがうつや引きこもりの原因となってしまうこともしばしばです。

現代の働き方は、非常にストレスがたまりやすい環境にあります。これに対応するためのメンタルトレーニングとして、レジリエンスが今、世界中で注目されているのです。ビジネスの現場だけではなく、海外では軍隊や刑務所でも導入が進んでいます。

日本でレジリエンスが知られるようになったのは、ごく最近のことです。