失敗体験を共有することもレジリエンスを育てる

1マイルの壁を破った選手は周囲に何を言われても、軸がぶれることはありませんでした。レジリエンスには、自分を客観視して冷静に状況に対処する技術が欠かせません。この技術はどうやったら身に着けることができるのでしょうか?

第一歩は、自分が過去に逆境に置かれたときの状況を振り返ってみることです。体験した当時は、つらい思いをしたかもしれませんが、今冷静に思い出してみれば、『あれがあったから今の自分がある』『あの出来事があったから成長できた』という部分があるのではないでしょうか?

逆境のさなかにあるときは、冷静に状況を判断するのは難しくなることがあります。つらかった体験を自分の成長体験として改めて客観的に見てみれば、その体験に新しい意味づけができるかもしれません。その体験をいちど紙に書き出して、再構築してみましょう。

そして、できればそれを誰かに話して共有することが望ましいです。実際にレジリエンスを学ぶためのセミナーでは、数人のグループをつくって自分のオリジナルの『レジリエンス・ストーリー』を発表する場を設けているそうです。つらい体験を話しているはずなのに、雰囲気は非常に和やかで、笑い声が聞こえることもしばしばだそうです。

発表するだけでなく、聞き手からいくつか質問をしてもらうそうです。『そこから何を学んだか?』『その経験にはどんな意味があったのか?』といったことを他者から問いかけられると、自分では忘れていたことが思いがけずよみがえることがあります。その忘れていたことが自分にとってとても大事なことだったということも少なくありません。

これといってたいした問題ではなくても、『なんとなく仕事が面白くない』『同僚とそりが合わない』など日常のちょっとした不満でも、つもり積もれば気が付かないうちに大きなストレスになっていく可能性があります。

自分を客観的に見ることは、こういった状況を打破するきっかけにもなります。自分は何のためにこの仕事、この会社を選んだのか?この仕事は社会にどんな風に役にたっているのか?こういった質問を改めて自分にしてみることで、今の仕事の新しい局面が見えてくるかもしれません。

それでも解消されないようだったら、将来、自分のキャリアのために今の仕事に何か役に立つことがあるだろうか?今の仕事をすることで、家族にどんないいことがあるか?などもっと視野を広げた質問を投げかけてみましょう。

社会に何の影響も及ぼさない仕事というのは存在しません。たとえば、車の部品のネジを締めるだけの単純作業であったとしても、車はそういった小さな作業の積み重ねで車になり、街を走っているのです。一見つまらなく思える仕事でも、そうした見かたをすることで新しい意味を見出したり、動機付けになることがあるのです。

つらい状況にあっても、何らかの意味や意義を見出すことができればその状況を乗り越えることは不可能ではありません。