なぜレジリエンスが注目されるのか

レジリエンスとは、『精神的回復力』や『復元力』などと訳される心理学用語です。最近では、訳さずにそのまま使われることが多くなってきました。一般には、まだなじみの薄い言葉ですが海外のビジネスパーソンには必須のメンタルトレーニングの一つとなっています。

レジリエンスの研究のきっかけは1970年代にさかのぼります。1970年代にホロコースト(大量虐殺)を経験した孤児たちの追跡調査をしたところ、トラウマから立ち直れずに無気力や無力感にさいなまれている人たちがいる一方で、トラウマを克服し、社会人となり幸せな家庭を築いている人もいました。

この違いはどこからくるのかを追求する研究が始まりました。トラウマを乗り越えた人は逆境にあっても、その中にプラスの面を見出しポジティブに考えることができる『思考の柔軟性』をもっていることが明らかになったのです。

2013年、世界経済フォーラムが年一回開催する『ダボス会議』で、経済的競争力とレジリエンスの関係について衝撃的な報告がありました。アメリカやヨーロッパの国際競争力の高い先進国では、競争力の高さとレジリエンスの高さが比例していました。ところが、日本だけ競争力に比べてレジリエンスが著しく低いという結果が出たのです。

いまや世界経済はグローバル化し、中国やインドなどの新興国の台頭もめざましく、経済的競争は激化の一方です。これだけ世界がめまぐるしく変化していくと、今までのような現状維持をよしとする日本従来の考え方ではついていけなくなってしまいます。

常に新しいことがおきてあたりまえ!と心得ておかないといけないわけですが、日本人はどうもこのへんの心構えができていないようです。

残念なことですが、日本は自殺率が大変高い国です。最近はうつ病をわずらう人も急激に増えてきています。理由は人それぞれでしょうが、このようなメンタルが確立されていないことも要因のひとつではないでしょうか。

レジリエンスには、大きくわけて3つの特徴があります。

①回復力…逆境や困難に見舞われても、すぐ元にもどることができる。
②緩衝力…予想外の出来事や強いストレスに耐性がある。
③適応力…予期せぬ変化や危機にあっても、それを受け入れて対応する。

この3つの要素が備わっている人は、少々のことがあっても心が折れたりすることがありません。以前はメンタルトレーニングといえば、鋼のような強い精神力をつけることに重点がおかれていました。しかし、それだと強いストレスを受け続けるとある日突然、心が折れて立ち直れなくなる可能性があります。これがうつや引きこもりの原因となってしまうこともしばしばです。

現代の働き方は、非常にストレスがたまりやすい環境にあります。これに対応するためのメンタルトレーニングとして、レジリエンスが今、世界中で注目されているのです。ビジネスの現場だけではなく、海外では軍隊や刑務所でも導入が進んでいます。

日本でレジリエンスが知られるようになったのは、ごく最近のことです。